移民法案が19日夜、国会で最終的に採択された。政府は保守勢力に譲歩して法案の大幅修正に応じ、下院での採決では極右RNも法案に賛成票を投じた。左派勢力は政府の右傾化を非難。政府与党内にも法案採択を巡り大きな亀裂が生じた。
これより前、下院は法案の一括否決の決議案を採択していた。この決議案は、左派の環境派が提出し、この時は、保守野党の共和党と極右RNが共に決議案に賛成票を投じていた。政府は、両院協議会を招集して妥協案の策定を求めることを決め、背水の陣を敷いて法案の可決を目指した。両院協議会は、保守勢力が多数派を占めており(上院で保守勢力が過半数を占めており、政府与党は下院でも過半数を失っている)、厳しい協議の末に、移民制限を厳しく強化する内容の妥協案が19日に策定された。
同日夜に行われた下院での最終的な採決で、法案は賛成多数で採択されたが、政府与党の中には反対票を投じる者もあり、与党勢力内の亀裂が鮮明になった。共和党は揃って賛成票を投じたが、極右RNも賛成票を投じており、物議を醸した。政府はこれについて、RNが賛成票を投じなくても法案は可決されていたと主張しているが、RNは、極右の思想が浸透した結果の法案成立であり、RNが果たした役割は決定的だったと主張している。
採択された法案には、修正点として、まず、外国人への一部社会給付の制限が盛り込まれた。非就労者については、正規滞在5年以上の実績があることが受給資格として求められる(就労者の場合は30ヵ月)。なお重要な争点だった住宅補助手当(APL)の受給資格は、非就労者については5年以上、就労者の場合は3ヵ月の正規滞在実績が求められることになった(現行制度では正規滞在期間に関する条件はなく、滞在許可証取得後すぐに収入に応じて受給可能)。就労している不法滞在者の身分正規化については、各県庁が審査の上で正規化を決める制度を、2026年末までの時限措置として導入することで合意した。移民受け入れ上限を別途、設定する(3年間の期間を対象とする)ための国会審議を行うことでも合意がなされた。警察官等を殺害した二重国籍者の仏国籍はく奪、仏出生者への国籍の自動的な付与の廃止(申請制を復活)、重罪で有罪判決を受けた仏出生者への国籍付与の禁止なども盛り込まれた。外国人向けの医療支援制度(AME)の適用制限については、政府が2024年初頭に改革を実施することを約束してひとまず決着した。このほか、欧州連合(EU)域外からの外国人留学生を対象とした保証金納付義務の導入も盛り込まれた。