マクロン大統領は29日、妊娠中絶に憲法上の保障を与えるための憲法改正を実施すると予告した。法案を数日中に行政最高裁(コンセイユデタ)に事前審査のために提出し、年内に閣議決定を終える。2024年6月までに国会審議を終えて、両院合同会議により改憲を完了するとの日程を示した。上下院の全議員により構成される両院合同会議で5分の3以上の賛成を得ることが改憲の条件となる。
妊娠中絶の保障に関する改憲の動きは、議員立法法案の形で既に動き出していた。米国の最高裁が妊娠中絶の権利を制限する判決を下したことがきっかけとなり、与野党のかなりの範囲でコンセンサスが形成され、下院を通過の法案が上院で修正を経て下院で近く再審議される段階にまで至っていた。両院が同一の文言で採択しない限りは次の段階に進めないこともあり、マクロン大統領はこのタイミングで、政府提出の法案に切り替えて、2024年中の施行を目指すことを決めた。
報道によると、改憲では、「妊娠中絶を行う自由を女性に保障し、その行使の条件について法律で定める」旨の文言が第34条に追加される。下院を通過の法案は「権利」という言葉を使っていたのに対して、保守勢力が過半数を占める上院は「自由」という言葉に改めて法案を採択しており、この点が一つの争点になっていた。政府は「自由」という言葉をそのまま用いつつ、その周囲の表現を工夫することで決着を図る方針とみられる。改憲を推進した左派勢力と、消極的な勢力を内部に抱える保守陣営の両方が賛成しない限り、改憲は成立しないが、左派勢力もおおむね政府の介入を歓迎しており、成立が有望視される。