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パリ同時テロのアブデスラム受刑者、ブリュッセル高裁が仏への移送を差し止め

ブリュッセル高裁は3日、パリ同時テロ(2015年11月)の実行犯グループの生き残りで、フランスで終身刑判決が確定したサラ・アブデスラム受刑者(34)からの訴えを認めて、フランスへの身柄移送を差し止める判決を下した。受刑者の人権問題を理由に、緊急審理で移送をひとまず差し止めた。高裁は引き続き本件審理を行って最終的な判断を下すが、判断が出るまでには場合により数年間がかかるとみられている。このまま受刑者がフランスに戻らない可能性もある。
アブデスラム受刑者は、2022年7月にフランスでの裁判で「減刑不可の終身刑」というフランスで最も厳しい判決が確定していた。受刑者は、2015年11月の犯行後、土地勘のあるブリュッセル近郊に潜伏していたが、2016年3月18日に、銃撃の末に警官隊により逮捕された。その直後の3月22日にブリュッセルで同時テロが発生しており、受刑者はその準備に関与した疑いが問われていた。受刑者は、ブリュッセルで裁判がある度に、収容先のフランス国内の刑事施設から身柄が移送され、裁判が終わるとフランスに戻るという往復を何度か繰り返していた。今年7月には、ブリュッセル同時テロの控訴審裁判のため再びブリュッセルに身柄を移送されたが、裁判後に、フランスへの送還の差し止めを求める訴訟を起こした。ブリュッセル高裁はその訴えでひとまず受刑者側の主張を認めた。
裁判所は、「減刑不可の終身刑」という刑罰が、社会復帰の可能性を事実上閉ざす非人間的な刑罰であり、欧州人権条約に抵触する疑いがあると判断。弁護側は裁判で、家族の住むベルギーでの収監が妥当であると主張していたが、裁判所はこの主張も認めた。
なお、ブリュッセル同時テロの裁判では、検察側は終身刑を求刑したが、裁判所は、逮捕時の警察との銃撃戦に絡んで言い渡された禁固20年の有罪判決に罪を統合することを決定。アブデスラム受刑者がこのままベルギーに留まるなら、この禁固20年とフランスで下された終身刑が「減刑不可」の条件なしで執行されることになり、将来的な出所の展望も開ける。なお、受刑者は、ブリュッセル同時テロ裁判の控訴審有罪判決を上告せずに受け入れている。

KSM News and Research