私立託児所の内幕を探る調査ジャーナリストの2作がこのほど、同時に刊行された。利潤追求で子どもの福祉が犠牲にされている現状を糾弾する内容となった。
託児所大手のPeople&Babyのリヨン市内の施設で、2022年6月に子どもが死亡する事件が発生。事件当日にこの施設を一人で担当していた女性保育士が精神衰弱に陥り、子どもに家庭用洗剤を飲ませるなどして殺したことが判明し、事件は大きな衝撃をもたらした。それから1年余りが経過し、今回出版された暴露本は、具体的な事例に取材しつつ、民間業者が利潤を追求して人員を削り、資材の購入を抑えるなどしていると糾弾。食費を削って十分に食事を与えないといった事例を挙げて、子どもの福祉が犠牲になっているとする主張を展開している。
福祉分野では、高齢者施設における同様の入居者虐待の内幕を糾弾する暴露本が先に出版され、業界に大きな打撃と変動をもたらしたという前例もある。託児所を巡っては、上述の殺人事件を経て当局機関が官民の託児所を広く対象に実施した調査でも、問題事案が報告されていた。
民間の託児部門は、公共サービスの後退を背景にこのところ急成長を遂げており、Babilou、Les Petits Chaperons rouges、People&Baby、La Maison bleueの4社が特に強い。業界団体は今回の暴露本出版について、内容を精査しなければコメントできないが、業界全体に不正がまん延していると安易に考えるべきではないと説明している。政府はこの件を重く受け止めて、民間施設の検査体制を強化する方針を明らかにした。託児サービスを民間に委ねること自体が悪という論調もある。
KSM News and Research