ルモンド紙によると、アルティス・グループは仏通信大手SFRの株式の一部を譲渡する方向で検討を開始した。ラザード銀行(投資銀行)と仏BNPパリバ銀行に依頼して検討作業に着手したという。アルティスと銀行2社はいずれもこの報道に対するコメントを拒否している。
アルティスは、仏イスラエル籍の実業家パトリック・ドライ氏が率いるグループで、フランス事業のアルティス・フランスと、ポルトガル事業をはじめとする外国事業のアルティス・インターナショナルにより構成される。アルティスはデットファイナンスによる企業買収で成長を続けてきたが、金利が上昇局面に入り、債務返済に向けた展望が厳しくなっている。ドライ氏の片腕として活躍したポルトガル人のペレイラ氏を中心人物とする汚職疑惑も浮上しており、ドライ氏としては、財務の健全化が急務となっている。
SFRはフランス第2位の通信会社で、携帯加入者数は2050万人、固定サービスの加入者数は650万人に上る。6月末日時点で238億ユーロの債務を抱えるが、足元では年頭以来で携帯加入者数の23万5000人減に見舞われるなど業績が傾いている。ルモンド紙によれば、投資ファンドなど数社が、安定した現金収入の展望にひかれて出資を希望しているというが、競合のキャリア3社は競争規則上の問題から及び腰であるという。
アルティスはこのほか、Teads(デジタル広告)やポルトガル・テレコムなど一連の資産の株式譲渡の可能性を検討している模様。逆に、アルティス・フランス傘下のBFM TV(テレビ局)などメディア資産については売却の可能性を否定している。