エレベーターのSIMカードを狙った盗難が相次いでいる。高層住宅の住人らが多大な迷惑を被っている。
エレベーターには、非常時の連絡手段を確保するためにSIMカードが必ず搭載されており、非常時の通報ボタンを押すと、このSIMカードを起点に、携帯通信網を経由してセンターの係員と会話ができるという形になる。SIMカードがなくてもエレベーターの昇降の機能そのものに影響はないが、非常時の連絡手段がなくなることから、SIMカードなしでのエレベーターの運営は法律により禁止されている。
こうした盗難事件は、数ヵ月前にパリ西郊のオードセーヌ県、特にナンテール市の高層団地街で発生したのを皮切りに、パリ首都圏の全域やノルマンディ地域圏などに広がっている。さらに全国に拡大する兆候もある。
SIMカードを狙う動機は、犯罪目的での悪用が目的であると考えられている。大量にフィッシングのSMSを送付する手段に用いられている模様で、ダークウェブ経由でSIMカードを詐欺団に転売している可能性がある。盗難の被害を受けているオーベルビリエ市の住宅公団では、6万2000ユーロ程度の請求が電話会社から来たカードもあるという。対策として、この公団は、一定数のSMSが発信されたり、利用機種が変更されると自動的に使用が停止される契約への切り替えを進めている。悪用の商品価値をなくすことにより、盗難する意味を失わせるという対策となる。