欧州連合(EU)は7月20日、ブリュッセルで外相理事会の会合を開催し、トルコとの関係について協議した。トルコはEU加盟候補国であり、また、北大西洋条約機構(NATO)の重要な加盟国でもあるが、ロシアによるウクライナ侵攻に際して、EUやNATOとは一線を画し、ロシアとも友好的な関係を維持しつつ、黒海を経由したウクライナ産穀物の輸出に関する合意を仲介するなど、独自の役割を演じている。トルコはロシアが制裁を迂回する上でも一役買っており、EUはこうしたトルコの姿勢に苛立ちを示しつつも、同国の地勢戦略的な影響力が強まったことを考慮し、6月の首脳会議(欧州理事会)において、トルコとの関係見直しに向けた報告書の作成をボレル外務・安全保障政策上級代表に要請していた。さらに、7月に入ってから、懸案となっていたスウェーデンのNATO加盟について、トルコは加盟を認める交換条件として、凍結されたままとなっているEU加盟交渉の再開を要求。これを受けて、EUはトルコとの関係強化に向けた検討を加速せざるを得ない状況に置かれた。
トルコは現在、深刻な経済危機に見舞われており、最大の経済パートナーであるEUとの貿易を強化し、EUからの投資を引き出す必要に迫られている。
こうした状況も考慮して、EU外相理事会では、1995年に締結した関税同盟の強化、難民合意の見直し、ビザ規制の緩和、エネルギーや気候分野での協力強化などを検討。また、トルコが人権や法の支配に関する問題で具体的な改革を行う必要があるとの見方でも一致した。
ただし、EUは現状ではトルコとの加盟交渉の再開に応じることは想定していない。交渉は2005年に開始したが、2016年にクーデター未遂事件が発生し、エルドアン政権が反対派の政治家やジャーナリストに対する弾圧を行ったことを機に、停止されたままとなっている。EUとしてはトルコが強権を改め、民主化への移行を目に見える形で実行しない限りは交渉を再開しない立場を貫いている。
なお、トルコの加盟には、北キプロスを巡るキプロスやギリシャとの対立も障害となっているが、これについては、緊張緩和に向けた動きが進んだと評価されている。