パリ西郊ナンテール市で27日朝、警官により17才の少年が射殺される事件があった。この事件をきっかけに、ナンテール市があるオードセーヌ県を中心として各所で若者らによる暴動騒ぎが発生した。
死亡したナエルさんは、借用した自動車に乗って、仕事に赴くために走行中に警官隊に制止された。しばらく会話があった後に、ナエルさんは警官らの停車命令に従わずに発進し、銃を構えていた警官が発砲してナエルさんは死亡した。警官は当初、自分に向かって車が進んできたことから身を守るために発砲したと説明していたが、付近にいた人が事件を撮影した動画は、発砲した警官が車の脇に立っていたことを示しており、切迫した危険はなかったように見える。なお、ナエルさんは無免許で、過去にも停車命令に従わなかった件で有罪判決を受けた前歴がある。発砲した警官は38才で、これまでの勤務評定は良好だったという。動画の浮上を経て逮捕の上で取り調べを受けており、警察の内部調査と司法当局による殺人容疑の捜査の2件が開始されている。
事件を受けて、27日夜にはナンテール市をはじめとする各所で若者らによる暴動が発生。自動車の放火や、バス停等の施設の破壊、治安部隊に対する花火を用いた攻撃などの事案が相次いだ。マントラジョリ市(エソンヌ県)では市役所の施設が放火される被害もあった。全体で30人余りが逮捕され、治安部隊の側に負傷者も出た。
今回の事件で、警察による暴力に関する論争が再燃した。マクロン大統領は28日の時点で、ナエルさんの死を「説明できず、許され得ない」と言明。遺族への哀悼の念を表明した。政府は厳正な対処を約束しつつ、鎮静化を呼びかけたが、28日夜にも再び暴動騒ぎが起こるリスクに備えて治安部隊の投入を増強すると予告した。警察労組と極右政党RNはマクロン大統領の発言に反発し、RNのマリーヌ・ルペン下院議員団団長は、捜査が終了する前から責任があると決めつけるのは誤りだなどと攻撃した。