エトワでは、エトワパートナー企業にスポットをあてた「企業インタビュー」を掲載しています。
第一回目はエトワの大人気コンテンツである「今日のフランス」の提供元、「KSM NEWS & RESEARCH」。フランス発のさまざまなニュースを日本語に翻訳し、要約した記事を提供してくださっています。初回となる今回は代表の斉藤あや子さんにインタビューし、詳しい事業内容のほか、フランスでの職場環境の特徴、女性の働き方などについて貴重なお話をうかがいました。
(※この記事は2017年11月7日の記事を加筆修正し、再掲しています。)
──貴社の事業内容のご説明をお願いします。
現KSM NEWS & RESEARCH社の前身であるKSM社は、パリで有数の同時通訳者であった黒田利朗氏により1981年に創業されました。以来、翻訳/通訳・調査、及びニュースレターの発行やその他情報提供など、語学を使ったサービスを展開しています。
2006年頃から始まったKSM社の事業多角化(外食・食品輸入への進出)にあたって、それまでの主要事業であった翻訳/通訳・調査・情報提供関連事業は2012年に分社化し、KSM NEWS &RESEARCH社という別会社となりました。翻訳・通訳・調査といった単発の仕事、ニュースレターやクリッピングといった定期的な仕事を行っています。
──現在、力を入れている分野の記事を教えていただけますか。
マグレブ・アフリカとエネルギー環境です。今後は「バイオ関係」にも力を入れたいと思っています。バイオと一口にいってもいろいろありますが、医薬品、化粧品、食品、化学など、そのあたりを包括した“バイオ”という新機軸のニュースレターを発行できれば、と考えています。
──人気のある記事はどういうものですか。
アフリカやマグレブですね。企業の関心がだんだん高くなってきている分野となりますが、日本からだと情報が取りにくいため、需要が高く、またエネルギー環境についてもお問い合わせが多いです。
──どんな形の事業体なのでしょうか。
我々の会社は旧KSMの経営形態をそのまま引き継いだ様に見えると思いますが、2012年の分社化の際にKSMと資本関係を無くし、社員全員が株を持つ形で運営を始めました。上下の関係のあまりないユニークな会社です。フラットな関係というのはなかなか難しい部分もありますが、社員全員が経営に参加し、自分の意見を言える環境作りを目指しています。また、勤務時間ははっきりフレックスという制度を置いているわけではありませんが、社員全員の信用ベースで勤務場所や時間は、割と自由にしています。学者気質の人が多いので、営業的な部分が弱いのが難点ですね。
──フランスと日本、働き方の違いや、良い点・悪い点などありますか。
従業員と経営陣という二つの立場を経験して思うのですが、フランスというのは雇われる方から考えるととても良い国ですが、雇う側としてはなかなか厳しい国ですね。日本の企業の方がフランスに進出して驚かれるのは、労使問題。雇用・解雇には厳しい条件があり、またコストもかかりますし、労働者の権利が確保されているので、従業員側には自分の生活ややりたいことを守れるというメリットがある反面、会社側からすると、雇用に関して柔軟でないところもあります。フランスは職務内容がはっきり決まっており、決められた仕事以外はやらないという人も多く、日本と働き方も違い、ビジネス慣行の違いを感じます。
──女性の役割や働き方について、どう感じますか。
フランスはやはり女性に親切に出来ていますね。統計では、女性は男性に比べて報酬が低かったり、幹部への昇進が難しかったりなどの障害もあるようですが、それでも日本などに比べると女性はしっかり社会進出していますし、女性が安心して仕事が出来るように、バックアップしているように感じます。例えば子供を産んでもちゃんと戻って来やすい環境、お母さんが子供のために平日 に休む、毎日定時にきっちり帰っていくことなど、フランスの企業は当然の権利として認め、正しい事として受け入れています。
──貴社もそういうスタンスでしょうか。
特にうちの会社はもともと女性が多いため非常に働きやすいと思います。「子供が熱出したので」といわれたら、「どうぞ、どうぞ休んでください」といった感じですし、「今日は学校に呼ばれて」とかでしたら、「心配せず行ってください」という風です。女性が多いということは企業内での役割も非常に大きいということですので、女性の貢献度が非常に高いです。フレックス制度もそうですが、小さい会社などは、こういった働き方が増えていくのかなという気がします。
──貴社の今後の展望や目標はありますか?
目標ということではないのですが、我々には少し危機感があります。コンピューターやAIの発展に伴って、無料で取れる情報や自動翻訳によって得られる翻訳が増えています。翻訳に関しても人間がやらなくてもいい翻訳というものが沢山出てくると考えており、我々の業界自体少しずつ需要が減っていってしまうのかなと危惧しています。
ただ、自由に取れる情報量がふえているからといって正しい情報をみんなが持っているかは別の話で、むしろ間違ったものも同じくらい拡散しているので、そこでどれだけ信憑性のあり、かつ他にない情報を提供していけるかが我々の課題だと思っています。翻訳も同じことが言えて、現在のところは人間にかなう自動翻訳機というものはないので、人間にしか出来ない部分をどうやってアピールしていくか、これから我々が取り組んでいくことだと思っています。
とはいえ、我々も時代に合わせた別の事業展開を考えたほうがいいのかなというのも少しありますね。今のところお蔭様でこれまでのお客様や新しいお客様もいらっしゃいますので、なんとかやってはいますが、これから10年15年先には他の事をやっていないといけないだろうなとは思っています。
──「パリエトワ」をパートナー企業からみてどう思いますか。
パリエトワのすごく気に入った点というのは、「これまではバラバラにビジネスをやってきた他の企業さんや自営業者さん、これから起業を考える方とチームを組み、オープンな情報交換ができる」という点ですね。「あいつ、あんなことやってる」といった狭量なライバル意識を超えた、エトワの「みんなでやろうよ!」といった姿勢に共感しました。競合になってしまうところもあるのかもしれないですが、そこも含めてみんなwin-winになればいいですよね。
──最後に、企業人として、フランスで働きたいみなさんにメッセージをお願いします。
フランスで日本人が仕事を探していくのは、何か手に職がない限りなかなか大変なように感じます。なんだかんだいって資格社会、学歴社会ですので、「これは出来る!」というものを大事にする、新たに取得するなどが必要かなと思います。
齊藤 あや子
KSM NEWS & RESEARCH代表(Présidente)
名古屋生まれ、名古屋育ち。1992年上智大学フランス文学科卒、在学中に1年間フランスに留学後、卒業後にフランス人が経営する会社で仏語を使った秘書を3年。1999年にロータリーの奨学金の給付を機に渡仏。リヨン大学の文学部修士課程に3年在籍後、パリの通訳・翻訳家養成グランゼコール(ESIT)翻訳科で1年の課程を終了し、現在の前身であるKSM社に2003年に入社。2012年にKSM社からKSM NEWS &RESEARCH社へ分社化後、代表として勤務。滞在年数:17年。
KSM NEWS & RESEARCH (ケーエスエム ニュース&リサーチ)
1981年にフランス・パリで創業した、歴史と実績のある翻訳・通訳会社
WEBサイト | ksm.fr