プログラミング言語COBOLを扱える技術者が不足している。特に銀行・保険業界ではCOBOLで作成されたソフトウェアが広く用いられており、開発や保守ができる人材が必要だが、近年では他の言語に押されて教育が後退しており、退職する技術者の補充が困難になっている。
COBOLは1959年に開発された事務処理用のプログラムで、国際標準規格となり広く普及した。帳票などの機能に優れていることから、銀行の現金出納や決済管理、保険事故の申告情報管理や各種発券業務など、導入が早かった分野においては、COBOLで開発されたソフトウェアが現役で広く用いられている。しかし、フランスでは、今世紀に入って以降、COBOLは学校における教育課程からは除外されており、新たな人材は育っていない。その一方で、COBOL専門家として育成された世代の技術者が定年退職する時期を迎え、銀行・保険業界を中心に、人手不足が深刻化している。ラ・バンク・ポスタル(銀行)、コベア(保険)、BPCE銀行などは、「COBOL技能者求む」の求人広告を頻繁に出している。2年前に退職したCOBOLプログラマーのロンジェさんも、「定期的に求人の誘いが来る」と証言している。
より新しい言語で作成されたソフトウェアへのマイグレーションということになると、費用がかかる上に、正しく機能するという保証はない。「COBOLがないならJAVAにすればいいじゃないの」を実践した英TSB銀行の場合は、2018年に巨大な不具合が発生し、賠償で3270万ポンド、当局による罰金で4860万ポンドという巨額費用負担を強いられた。各社とも古い言語から離れられないまま、COBOL職人を探すという状況が続いている。