ウクライナのゼレンスキー大統領は5月13日から14日にかけてイタリア、ドイツ、フランスを歴訪した。ロシアがウクライナに侵攻して以後で、イタリアとドイツへの訪問は初めて、フランス訪問は2023年2月8日以来の2度目となった。
13日のローマ訪問ではメローニ首相やマッタレッラ大統領と会談したほか、ローマ教皇フランシスコと会見した。メローニ首相はウクライナの勝利に賭けると述べ、必要な限り全面的な支援を行うと約束した。
ゼレンスキー大統領は14日にはベルリンとアーヘンを訪問し、ショルツ首相やシュタインマイヤー大統領などと会談した。独政府はこの機会に、27億ユーロの新たなウクライナ支援計画を発表した。これには、30台の主力戦車「レオパルト1A5」、20台の装甲車、200機の監視用ドローン、4基のIRIS-T防空システム、多数の弾薬などが含まれ、ウクライナへの支援額で、ドイツは米国に次ぐ2位に浮上した。なお、ウクライナ政府は、米国の大統領選挙でトランプ前大統領が政権に復帰した場合に、ウクライナへの支援を縮小することを懸念しており、ゼレンスキー大統領はドイツの追加支援に感謝するとともに、ドイツが支援規模で1位になることを期待する旨を表明した。なお独ラインメタル(軍需・防衛大手)はウクライナで戦車の修理、弾薬の製造、防空の3部門における合弁会社の設立に着手している。ショルツ首相はウクライナが要請している戦闘機の供与などについては態度を明らかにしなかったが、停戦合意の可能性については、ロシア軍の無条件での即時撤退が前提条件となるとの立場を言明し、ロシア軍がウクライナ領内に残留したまま現状を凍結する形で停戦が成立することを懸念するウクライナ政府に寄り添う姿勢を明確にした。
14日のパリ訪問では、マクロン大統領がゼレンスキー大統領を大統領府に迎えて会談した。フランスはAMX-10RCを含む装甲車などの提供を発表したが、それ以上に両大統領の協議は「戦後」のウクライナの安全保障構築などを巡る政治的なテーマが中心だった模様。マクロン大統領は当初から、外交による和平の必要性を考慮する必要性を指摘しており、ロシアへの対抗に前のめりになっているポーランドなど東欧諸国の強硬姿勢が和平のチャンスを潰すことを警戒している。