フランスにおける電力先物価格が高騰している。現在、2023年10-12月期渡しの先物価格は1MWhあたり303ユーロ、2024年渡しの先物価格は1MWhあたり213ユーロとなり、欧州でも最高水準に達している。2023年10-12月期渡しの価格は、隣国のドイツで1MWhあたり150ユーロ、イタリアやオランダでも145-180ユーロ程度にとどまっており、その差が大きく開いている。
フランスにおける電力先物価格の高騰の背景には、原子力発電量への不安がある。パンリー原子力発電所(セーヌマリティム県)、カットノン原子力発電所(モゼル県)の原子炉において最近新たな亀裂が検出されたことに加え、年金改革に対するストによって原子力発電量が低下。更に、ストの影響で原子炉の保守作業が遅れ、今冬から来年にかけて発電量が減少する恐れが指摘されている。EDFは、ストが発電量に与える影響は小さく、2023年通年の原子力発電量目標「300-330TWh」を維持すると説明している。
なお、国内原子炉の応力腐食割れの問題の悪影響が特に心配されていた昨年夏には、やはりフランスにおける電力先物価格が隣国を大きく上回った。その後、無事に冬季を乗り切ったことでこの差は大きく縮小。今年3月の第1週には、フランスの先物価格(2024年渡し)は1MWhあたり148ユーロまで低下し、ほぼドイツと同じ水準となっていた。