ドイツ連邦政府と州政府は、月額49ユーロの定期券「ドイチュラント・チケット」でローカル線の乗り放題を提供することで合意した。このために年間15億ユーロずつ、総額30億ユーロを、連邦政府と各州政府が折半で援助することを決めた。2025年まで援助を継続することで合意した。定期券の提供はこの5月より開始される。
ローカル線乗り放題の定期券は、月額9ユーロで2022年6月1日から8月31日まで期間限定で提供され、成功を収めた。全部で5200万枚が販売され、うち1000万枚は3ヵ月間を通じての加入だった。政府はこの制度を気候変動対策の一環として、鉄道利用を奨励する目的で導入した。ただ、2022年に道路利用の二酸化炭素排出量は前年比で100万トン増を記録しており、本来の目的に照らしてどの程度の効果があったのかは明らかになっていない。また、期間中の定時運行率は89%を割り込んでおり(運行見合わせの列車は含めないで計算)、鉄道の運行状況が改善されない中での乗客増加で不満を引き起こす側面もあった。
ケルン経済研究所の試算によると、公共交通機関の運行の費用は年間250億ユーロ近くに上る。月額49ユーロの「ドイチュラント・チケット」に2000万人が加入したとして、年間収入は117億ユーロで、今回決まった年間30億ユーロの公的補助を考慮に入れても賄いきれない額になる。公的補助のかなりの部分は、ローカル線の運行の3分の2を手掛けているドイツ鉄道(DB)に入るが、ドイツ鉄道はインフラ刷新に巨額の負担を強いられている中でもあり、「ドイチュラント・チケット」の導入は必ずしも朗報ではない。