黒崎愛海さんの殺害事件の控訴審公判が21日にオートソーヌ県重罪院(ブズール市)で始まった。セペダ被告人(32)が弁護士を務めていたベイ氏を解任したことから、裁判はすぐに中断した。23日に再開される。
ベイ弁護士は、刑事事件専門の弁護士として鳴らしたデュポンモレティ現法相のかつての同僚。セペダ被告人は、1年前の第1審で依頼先だったラフォン弁護士を解任し、ベイ氏に弁護を依頼していたが、21日の公判では最初にベイ氏の書簡が朗読された。ベイ氏はこの中で、解任されたことを明らかにし、弁護士として出廷できない旨を表明した。裁判所は国選弁護人2人を被告人に提案したが、被告人側はポルトジョワ弁護士事務所を選任し、裁判は23日に延期された。ポルトジョワ弁護士事務所は、セペダ被告人が当初から依頼していた複数の弁護士事務所の一つ。
今回の解任劇の背景について、ルモンド紙は、被告人の両親の意向が反映されたものだと報じている。セペダ被告人は地元チリの資産家・名士の家柄で、両親は不名誉な裁判から息子を守ろうとあらゆる手を尽くした。第1審裁判では、不利な証拠の数々を前に、ラフォン弁護士が、量刑を軽くする目的もあり、被告人に自供を暗に促す場面があったが、被告人は泣き崩れはしたものの、罪を認めることはなかった。そこには、陪審席の最前列で常に息子を注視し、休憩時には被告人と言葉を交わす両親の姿があり、「罪を決して認めない、無実を一貫して主張する」という方針を貫くよう、息子を厳しくコントロールしている様子がうかがわれたという。ベイ弁護士の解任劇は、困難な裁判で活路を見出そうとする弁護士に対して、両親が、息子に対してと同様に決して自由を与えなかったというのが真相であるかもしれない。
仏ブザンソンに留学中だった女子大生の黒崎愛海さんが2016年12月に行方不明となったこの事件では、遺体が発見されないまま、かつての交際相手だったセペダ被告人が起訴された。第1審のブザンソン重罪院は2022年4月に、被告人に対して禁固28年の有罪判決を言い渡した。被告人側が控訴し、今回の控訴審に至った。